外壁や屋根の塗装は、一軒あたりの金額が大きく、お客さんにとっては何年かに一度の大きな買い物です。それだけに、業者選びには慎重になります。腕には自信があるのに、なかなか直接の依頼が増えない。元請けの下請けや知り合いの紹介が中心で、自分の屋号で仕事を取る道が見えない。そんな悩みを持つ塗装屋さん・一人親方は少なくありません。
この記事では、個人や小さな塗装店が直接の依頼を増やすために、何から手をつければよいかをまとめました。訪問販売への警戒をどう解くか、施工事例と見積もりの見せ方、地域での認知、紹介、一括見積サイトとの付き合い方まで、今日からできることを中心に紹介します。
塗装のお客さんは「悪い業者に当たらないか」を一番心配している
塗装の集客を考えるうえで、まず知っておきたいのが、お客さんの頭の中にある不安です。
国民生活センターは2023年に、屋根工事の点検商法についての注意を呼びかけています。「近所で工事をしている」と突然訪ねてきて、点検のあとに「このままだと危ない」と不安をあおり、契約を迫る手口です。全国の消費生活センターなどに寄せられた相談は、2018年度の923件から2022年度は2,885件と約3倍に増え、契約した人の8割超が60歳以上だったとされています。事例の中には、屋根や外壁、床下の修繕を次々にすすめられたものもありました。
こうした話はテレビやネットでも取り上げられ、外壁や屋根の工事を考える人の多くが「突然来る業者は気をつけよう」「すぐに契約しないようにしよう」と思っています。真面目に仕事をしている塗装屋さんにとっては迷惑な話ですが、裏を返せば、この不安に正面から答えられる業者が選ばれやすいということです。
お客さんが確かめたいこと
- どこの誰が来るのか(会社の所在地、代表の顔、連絡先)
- 本当に自分たちで塗るのか(自社施工か、下請けに回すのか)
- 見積もりの中身はまともか(「一式」だけで終わっていないか)
- 工事のあとも付き合ってくれるのか(保証、点検)
- すぐに契約を迫られないか
この5つに、ホームページ・見積書・接客で一つずつ答えていくのが、塗装屋の集客の土台になります。
訪問販売への警戒を解く「見せ方」
お客さんの不安は、口で「うちは大丈夫です」と言っても消えません。確かめられる材料をそろえておくことが大切です。
顔と所在地を出す
代表の顔写真、屋号、所在地(自宅兼事務所で番地まで出したくない場合は、市区町村まで)、電話番号をホームページにまとめて載せましょう。名刺・見積書・車の表示と同じ屋号と電話番号にそろえておくと、検索したときに同じ店だと分かります。
「売り込みません」をはっきり書く
訪問販売を警戒する人ほど、「問い合わせたらしつこく営業されるのでは」と心配しています。次のようなことを、ホームページや見積もりの案内に書いておくと、相談のハードルが下がります。
- 見積もり・現地調査は無料で、断っても費用はかからないこと
- 見積書は家族と相談できるよう、その場で契約を求めないこと
- こちらから突然訪問して営業することはないこと(実際にそうしている場合)
訪問販売で契約した場合は、契約書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフができる、ということは広く知られています。自分は訪問販売をしていなくても、お客さんの不安を責めずに「心配な方は家族と一緒に聞いてください」と言える姿勢が信頼につながります。
第三者の目を気にしない
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」では、リフォーム工事を契約する前の人から見積書を受け付け、建築士の相談員が確認のポイントを助言するサービスを行っています。見積もりの中身に自信があるなら、「他社の見積もりや、こうした相談窓口と比べていただいて構いません」と言えることは、むしろ強みになります。
施工事例と見積もりの見せ方
施工事例は「家の状態→何をしたか→仕上がり」で書く
塗装のお客さんがホームページで一番見たいのは、施工事例です。写真を並べるだけでなく、1件ごとに次の4つを短く添えると、自分の家に置き換えて見てもらえます。
- 建物の状態(築年数の目安、チョーキング=手で触ると白い粉がつく状態、ひび割れ、色あせなど)
- 行った工事(高圧洗浄、下地補修、コーキングの打ち替え、下塗り・中塗り・上塗り)
- 使った塗料の種類
- 工期の目安
工程ごとの写真があれば、なおよいです。下塗り・中塗り・上塗りを同じ面で1枚ずつ撮っておくと、塗り回数を守っていることが一目で伝わります。
施工事例にお客さんの家を載せるときは、必ず事前に許可をもらいましょう。表札や車のナンバー、周りの家が写り込んでいないかも確認してください。
見積書は「項目」と「数量」を見せる
相見積もりで「一式」の数字だけを比べられると、手間を省く業者に価格で負けやすくなります。見積書には、少なくとも次の項目を分けて書きましょう。
| 項目 | 書いておきたいこと | お客さんに伝わること |
|---|---|---|
| 足場 | 面積(㎡)と単価、飛散防止ネット | 家の大きさに合った金額か |
| 高圧洗浄 | 面積 | 塗る前の準備をしているか |
| 下地補修・コーキング | 打ち替えか増し打ちか、長さ(m) | 傷みに合わせた補修をするか |
| 塗装 | 塗料の製品名、塗り回数、面積 | 何を何回塗るのか |
| 付帯部 | 雨どい、破風、軒天など | どこまで塗ってもらえるのか |
| 保証 | 年数と範囲 | 工事の後も責任を持つか |
ホームページにも「見積書にはこの項目を分けて書いています」と見本を載せておくと、見積もりを依頼する前から安心してもらえます。相見積もりで選ばれるページに載っていることは相見積もりで選ばれる職人のホームページに載っている7つのことでも紹介しています。
料金の目安は「条件つき」で出す
塗装の金額は家の大きさや傷み具合で大きく変わるため、「一律○円」とは言いにくいものです。それでも、「一般的な2階建てで、外壁だけならこのくらいの範囲が多い」「屋根も一緒に塗ると足場代が一度で済む」といった目安と、金額が変わる条件を書いておくと、お客さんは問い合わせる前に見当をつけられます。
地域で名前を知ってもらう
塗装の仕事は、地元で「見たことがある」「名前を聞いたことがある」と思ってもらえるかどうかが大きく効きます。お金をかけずにできることから始めましょう。
Googleマップに登録して育てる
「外壁塗装 ○○市」で検索すると、地図と店の一覧が出てきます。ここに載るには、Googleビジネスプロフィール(Googleマップに店の情報を載せる無料の仕組み)への登録が必要です。自宅を事務所にしている場合でも、住所を出さずに対応エリアだけを表示する設定があります。登録の手順はGoogleビジネスプロフィールの登録方法にまとめています。
登録したら、施工事例の写真を少しずつ追加し、工事が終わったお客さんに口コミをお願いしましょう。塗装は数年後に差が出る工事なので、「数年たっても色あせが少ない」といった実際の声は、ほかのどんな説明よりも説得力があります。
現場そのものを「看板」にする
工事中の足場は、近所の人の目にいちばん触れる場所です。
- 工事の前に近所へあいさつに回る(騒音・洗浄の水・車の出入りの説明)
- 足場の外側に屋号と電話番号を書いたシートや看板をかける(お客さんの了解を得て)
- 現場の周りをきれいに保ち、塗料のにおいや飛散に気を配る
近所の人は、職人さんの態度や片付けをよく見ています。工事中の印象がよければ、「あそこで塗ってもらった業者さん」として覚えてもらえることがあります。
チラシは「訪問販売っぽさ」を消す
ポスティングのチラシは、地域に名前を知ってもらうのに向いています。ただ、塗装のチラシは訪問販売と同じ箱に入れられやすいので、「期間限定」「今だけ大幅値引き」のようなあおりは逆効果になりがちです。代表の顔、所在地、施工事例、ホームページの案内を載せ、「チラシを見てホームページで確かめてから連絡できる」流れを作りましょう。チラシとホームページの組み合わせ方はチラシ・ポスティングとホームページでくわしく書いています。
紹介とリピートを仕組みにする
塗装は、満足したお客さんが家族や近所、知り合いに話してくれやすい仕事です。ただ、待っているだけでは紹介は増えません。
紹介されたお客さんが「確かめられる」ようにする
紹介されたお客さんも、多くの場合は一度ネットで業者の名前を検索します。そのときにホームページや口コミが見つからないと、「本当に大丈夫かな」と不安が残ります。紹介を増やしたいなら、まず「紹介された人が確かめに来たときに見せる場所」を用意しておくことが近道です。
工事後の点検を約束し、実際に行く
工事が終わって1年後や数年後に点検に伺うと、お客さんは「塗ったら終わりではない業者」として覚えてくれます。点検のときに、ご近所で塗装を考えている人がいないか、さりげなく聞いてみるのもよいでしょう。点検の予定は、工事が終わったときに書面で渡しておくと、お客さんも安心です。
紹介をお願いするひと言
- 「仕上がりに満足していただけたら、ご家族やご近所で外壁が気になっている方にお名前を出していただけるとうれしいです」
- 「ホームページに施工事例を載せていますので、ご紹介のときはこちらを見せていただくと話が早いです」
名刺やリーフレットを数枚お渡ししておくと、紹介するときにお客さんが困りません。
一括見積サイトとの付き合い方
外壁塗装には、お客さんが一度の申し込みで複数の業者から見積もりを取れる一括見積サイトや紹介サイトがいくつもあります。
良いところ
- 自分では届かない地域のお客さんと出会える
- 「塗装をしたい」と決めている、温度の高いお客さんが多い
- 独立したばかりで実績が少ない時期でも、見積もりの機会を得やすい
気をつけたいこと
- 費用の仕組みがサイトごとに違う(紹介ごとにかかるもの、成約したときにかかるもの、掲載料がかかるものなど)
- 最初から複数社で比べる前提なので、価格で比べられやすい
- 成約しなくても、現地調査や見積書づくりの手間はかかる
登録する前に、費用がかかるタイミング(紹介時か成約時か)、キャンセルになったときの扱い、工事金額の報告ルール、退会の条件を必ず確認してください。条件はサイトによって大きく違い、変わることもあります。
「比べられても負けない」準備をしておく
一括見積サイトで出会ったお客さんも、見積もりをもらった後に業者の名前で検索します。そのときに、施工事例や工程の説明、保証の中身が分かるホームページがあれば、金額以外の理由で選んでもらえる可能性が高まります。サイトは出会いの入口、ホームページは比べられたときの決め手、と役割を分けて使うのがおすすめです。
よくある失敗と、今日からできるチェックリスト
よくある失敗
- 施工写真が完成後の1枚だけ:工程が見えないので、塗り回数を守っていることが伝わらない
- 見積書が「外壁塗装工事 一式」:安い見積もりとの違いを説明できない
- あおる言葉を使う:「今すぐ塗らないと危ない」「今月だけ半額」は、訪問販売と同じに見られてしまう
- 屋号や電話番号がばらばら:名刺・見積書・Googleマップで表記が違うと、検索したときに別の店に見える
- 工事が終わったら連絡を絶つ:点検や紹介のきっかけを自分で手放してしまう
今日からできるチェックリスト
- 名刺・見積書・車・Googleマップの屋号と電話番号がそろっているか確かめる
- 次の現場から、下塗り・中塗り・上塗りの写真を同じ面で撮る
- 見積書の書き方を見直し、足場・洗浄・補修・塗装・付帯部・保証を分ける
- 「見積もり無料・断っても費用なし・その場で契約を求めない」を文章にしておく
- 過去のお客さんに点検の連絡をする予定を立てる
- 一括見積サイトを使っているなら、年間の費用と、そこから決まった件数を書き出す
塗装屋さんのホームページに載せたい内容は、塗装店のホームページのページにもまとめています。
まとめ
塗装屋の集客は、お客さんの「悪い業者に当たらないか」という不安に、確かめられる材料で答えていくことが出発点です。顔と所在地を出し、工程が分かる施工事例と項目を分けた見積書を用意し、現場とGoogleマップで地域に名前を覚えてもらう。紹介と点検で付き合いを続け、一括見積サイトは入口として上手に使いましょう。
施工事例や工程の説明をどう並べればよいか迷うときは、ホームページを先に1ページ無料で試作してくれるサービスを使って、形にしてから考える方法もあります。
業種別塗装店のホームページに載せるべきこと→

