
親方、インボイスの「2割特例」が終わるって聞いたんです。正直、自分に何が関係あるのかよくわかってなくて…。
ダンドリ親方ほな、今日の段取りいこか!その声、ほんまに多いんよ。結論から言うで。来年から納める消費税が増えるから、今のうちに準備しとこな。
インボイス登録をして、消費税の申告で「2割特例」を使ってきた一人親方・職人さんは多いと思います。売上にかかる消費税の2割だけを納めればよい、手間も少ない特例です。
この2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業主なら、令和8年分(2026年1〜12月)の申告、つまり2027年3月31日が期限の申告が最後なんです。
そのあとは、令和8年度の税制改正で、個人事業者だけが使える「3割特例」が令和9年分と令和10年分の2年間に限って作られました(国税庁が2026年4月に案内)。何が変わって、どう備えればいいのか。計算例と図で順番に見ていきましょう!
この記事の結論
- 2割特例は令和8年分の申告で最後。令和9・10年分は「3割特例」になり、納める消費税は1.5倍になります
- 建設業(第3種)なら簡易課税と同じ負担。手間請けやサービス業なら、3割特例のほうが少なくすみます
- 来年1月から「売上の消費税×0.3÷12」を毎月よけておけば、申告で慌てずにすみます
- 令和8年分まで2割特例:売上の消費税の2割を納める
- 令和9・10年分3割特例:売上の消費税の3割を納める
- 令和11年分から簡易課税か本則課税のどちらかで計算
免税事業者からインボイス登録で課税事業者になった個人の場合。法人は3割特例を使えません。
2割特例は「令和8年分」の申告で終わる
2割特例は、もともと免税事業者だった人が、インボイス登録をしたことで消費税を納めることになった場合の負担をやわらげる特例です。納める消費税を、売上にかかる消費税の2割にできます。
使えるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む課税期間です。個人事業主の課税期間は1月〜12月なので、令和8年分が最後になります。法人の場合は、決算月によって最後の期間が変わります。
でも僕、何か届出を出した覚えがないんですよ。それでも2割特例を使ってるんですか?
ダンドリ親方そこが落とし穴やねん。届出いらんかったから、気づかんまま使ってる人が多いんよ。
2割特例は、事前の届出がいらず、申告書に書くだけで使えました。そのため「自分がどの方法で申告しているか」を意識していない人も多いはずです。まずは去年の申告書の控えを見て、2割特例を使っているかを確かめましょう。
令和9・10年分は「3割特例」|納める額は1.5倍に
令和8年度の税制改正で、個人事業者向けに「3割特例」が新しくできました。ひとことで言うと、2割が3割になった特例です。
- 対象:個人事業者(法人は使えない)
- 期間:令和9年分と令和10年分の2年間
- 条件:令和9年分は令和7年の、令和10年分は令和8年の課税売上高(税抜)が1,000万円以下であること。そのうえで、インボイス登録(または課税事業者を選ぶ届出)をしたために消費税を納めることになった人
- 手続き:事前の届出はいらない。確定申告書に3割特例を使うことを書く
計算例で見てみましょう。税抜の売上が500万円なら、売上にかかる消費税は50万円です。2割特例なら納めるのは10万円でしたが、3割特例では15万円になります。同じ売上でも、納める消費税が1.5倍になるということです。
出典:国税庁リーフレット(令和8年5月改訂)・タックスアンサーNo.6505 のみなし仕入率をもとに単純化して計算。実際の税額は業種の区分や売上の中身で変わります。
年に5万円も増えるんですか…。それって、けっこう痛いですね。
ダンドリ親方月にしたら4千円ほどや。先によけとけば怖ないで。ここ大事やで。
差額だけでなく、納める総額で考えておくのがコツです。3割特例なら、去年の申告書の「売上の消費税」×0.3÷12を、来年1月から毎月よけておくのが目安になります。売上の消費税が50万円なら、月1万2,500円です。
自分の業種はどれ? 簡易課税の区分を確かめよう
3割特例のほかに、「簡易課税」を選ぶこともできます。簡易課税は、売上にかかる消費税に、業種ごとに決められた割合(みなし仕入率)をかけて、経費の分を差し引いたことにする計算方法です。
| 区分 | 主な仕事 | みなし仕入率 | 納める割合 |
|---|---|---|---|
| 第3種 | 建設業(材料を自分で用意する工事)など | 70% | 売上の消費税の3割 |
| 第4種 | 材料を支給されて手間だけ請ける仕事など | 60% | 4割 |
| 第5種 | サービス業(ハウスクリーニングなど) | 50% | 5割 |
職人さんの仕事に当てはめると、目安は次のとおりです。エアコン取付・電気工事・塗装・解体など材料を自分で用意する工事は第3種、同じ工事でも材料を支給されて手間だけなら第4種、エアコンクリーニング・ハウスクリーニング・便利屋は第5種です。1人で複数の仕事をしている場合は、売上を分けて計算します。
同じ職人でも、材料を自分で買うか、支給されるかで簡易課税の区分が変わることがあります。自分の仕事がどれにあたるかは、税務署や税理士に確かめてください。
◎○△で比べる|3割特例・簡易課税・登録をやめる
令和9・10年分に考えられる道は、大きく3つです。納める額と手間、取引への影響で並べると、こうなります。
| 比べるところ | 3割特例 | 簡易課税 | 登録をやめる(免税に戻る) |
|---|---|---|---|
| 建設業(第3種)の負担 | ◎ 売上の消費税の3割 | ◎ 3割 | ◎ 納めない |
| 手間請け(第4種)の負担 | ◎ 3割 | ○ 4割 | ◎ 納めない |
| サービス業(第5種)の負担 | ◎ 3割 | △ 5割 | ◎ 納めない |
| 手続き | ◎ 届出不要・申告書に書くだけ | ○ 届出が要る(期限の特例あり) | △ 取引先との話し合いが前提 |
| 使える期間 | △ 令和9・10年分だけ(個人のみ) | ○ 続けられる(一度選ぶと原則2年) | ○ 売上1,000万円以下なら |
| 元請けとの取引 | ○ 今までどおり | ○ 今までどおり | △ 元請けの控除が減る |
建設業の第3種なら、簡易課税でも納めるのは売上の消費税の3割で、3割特例と同じです。一方で、手間請けの第4種やサービス業の第5種なら、令和9・10年分は3割特例のほうが納める額が少なくなります。
ただし、3割特例は令和10年分で終わります。令和11年分からは、簡易課税か、実際の経費の消費税を差し引く「本則課税」のどちらかになります。材料費や車・道具の経費が大きい年は、本則課税のほうが有利になることもあります。登録をやめる道は、元請けとの関係しだいです。どれを選ぶかは、税理士や税務署に相談して決めましょう。
簡易課税に切り替えるときの届出は「翌年の申告期限」まで
簡易課税を使うには、「簡易課税制度選択届出書」を出す必要があります。今回の改正で、2割特例や3割特例を使った人は、その翌年分の確定申告の期限までに届出を出せば、その年から簡易課税を使えるようになりました。
たとえば個人事業主が、3割特例のあと令和11年分から簡易課税にしたいなら、令和11年分の消費税の申告期限(通常は3月31日。令和12年は31日が日曜のため4月1日)までに届出を出せば間に合います。
あわてて年内に出す必要はありません。ただ、一度簡易課税を選ぶと、原則として2年間は続けることになります。どの方法にするかは、経費の多さを見てから決めましょう。
元請けの控除が7割に|免税の職人さんは要注意!
インボイス登録をしていない免税の職人さんにも、関係する変更があります。元請けが、インボイスのない仕入れ(免税の職人への支払い)から差し引ける消費税の割合が、次のように下がっていくんです。
- 令和8年9月まで:8割
- 令和8年10月〜令和10年9月:7割
- 令和10年10月〜令和12年9月:5割
- 令和12年10月〜令和13年9月:3割
- 令和13年10月から:差し引けない
元請けにとっては、免税の職人さんに仕事を出すほど負担が少しずつ増えていきます。そのため今後、「インボイス登録をしてほしい」「登録しないなら単価を下げたい」という話が出てくることも考えられます。
登録するかどうかは、元請けとの取引の割合や、個人のお客さんからの仕事の多さで変わります。一方的に単価の引き下げを求められて困ったときは、ひとりで抱えずに、税理士や商工会・商工会議所、公正取引委員会の相談窓口などに相談しましょう。
今日からできること3つ
2割特例が使える最後の年は、今年(令和8年分)です。年が明けると確定申告の準備で忙しくなります。今のうちに、小さく3つだけ済ませておきましょう!
- 去年の申告書を見る:2割特例を使っているか、売上の消費税がいくらだったかを確かめる
- 来年からの積み立てを増やす:3割特例なら、納める額は今の1.5倍が目安。売上の消費税×0.3÷12を毎月よけておく
- 自分の業種の区分を聞いておく:令和11年分からの選び方を決めるため、税理士や税務署に早めに確かめる
見積書や請求書にインボイスの登録番号をどう書くかは、工事の見積書の書き方でも触れています。独立してからの準備を全体で見直したい方は、独立したら最初にやりたい集客の準備もあわせてどうぞ。
- 令和7年・8年の売上(税抜)が1,000万円以下か
- 今年(令和8年分)は2割特例で申告できるか
- 自分の仕事が簡易課税の何種にあたるか
- 経費の消費税(材料・燃料・道具)が年にいくらか
- 元請けから、単価や登録の話が来ていないか
- 相談できる税理士・税務署の窓口
まとめ
- 2割特例は、個人事業主なら令和8年分の申告(2027年3月31日期限)で終わる
- 令和9・10年分は3割特例。納める消費税は2割特例の1.5倍(売上の消費税50万円なら10万円→15万円)
- 建設業(第3種)は簡易課税と同じ負担。手間請け・サービス業は3割特例のほうが少なくすむ
- 令和11年分からは簡易課税か本則課税。区分と経費の多さを早めに確かめておく
- 免税のままの人は、元請けの控除が7割・5割・3割と下がっていく点に注意
ダンドリ親方まずは去年の控えを1枚見るだけでええ。最後は税理士さんや税務署に確認してな。今日の一歩で来年が楽になるで!
出典・参考:国税庁「令和8年度税制改正特集」、国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(リーフレット・令和8年5月改訂)、国税庁 インボイスQ&A 問117-3、財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」



